小学生の頃。
家族で出かけた海水浴で、それは起こった。
足がつかない海の上、大きな浮き輪を抱えてふわふわ浮いていた私は、父が自分の名前を呼ぶ声を聞いた。
「帰るから、自分で泳いでついてきて」
父は浮き輪につかまった妹を連れて前を泳いで行く。結構距離が離れたが、浮き輪で浮いているので不安はなかった。父と妹の姿はかなり小さくなったが、しばらく泳ぐと海底に足がついた。
ここまで書くとどこが人生最大のピンチなのかと思うが、数年後母に聞いた話だと、どうやらあの時、思いの外岸から離れすぎていたようだ。父は海岸の町生まれで泳ぎに自信はあったらしいが、足でも攣ったのか、子供を二人引っ張って岸に戻れるほどの状態ではなかったそうだ。
浮き輪つきだから落ち着いて行動できたが、下手したら浮き輪ごと離岸流に流されていたかも知れない。
父がパニックにならず落ち着いて指示をしてくれたので助かったのだろう。
夏の水の事故には本当に気を付けないといけない。