特養って、看取りの場ではなかったか

 老健は、中間施設なので、入所期間を終えれば自宅に帰ることになる。但し、そこには特養も含まれている。元気になれば帰ろうね、と。ただ実際には、入所のハードルが高い分、自宅復帰のハードルも高い。特養は法制上自宅扱いである。

 

 一人で暮らすのは無理だけど、見守りがあればなんとかADLは出来る、ならグループホームなどの選択肢もあるが、寝たきり、介護度4以上なら特養か、医療処置が必要なら医療療養病床入院、余りないなら介護療養病床入院になる。ただ、介護療養は国の方針で減床が決定している。実際は目標値ほど減らせてはいないようだが、受け皿を作らずに減らせと言われても、それは無理な話だろう。

 

 スマニューで、90代入所者が誤嚥で死亡した案件に賠償命令を下した裁判の記事を読んだ。世論は概ねこの判決に批判的なようだが、それはそうだろう。90代どころか、なんならもう60代でも誤嚥はする。高齢で機能的に低下していて、治療手段がないから入所しているのだ。看取りです、と家族に伝えているはずだが、裁判所は特養の法的な位置付けをどう捉えているのだろうか。嚥下障害は若くても起きるし、筋力低下を起こす難病や、ステロイドをやっている人なら尚更リスクが高い。年齢に依らず避けられない。若ければ咽せて排出出来るが、不顕性誤嚥をしょっちゅう起こしていて治療手段がなければ胃ろう一択しかない。こんな判決が出たら、スパゲッティ症候群の人がまた増えるな…と、暗澹たる気分になった。

 実査、胃ろうで何年も生き延びている人は多い。口から食べて、人間の尊厳を保つか、胃ろうで命を繋ぐか…いずれ家族が直面する事態である。その時にどんな選択をするか、自分に置き換えてみれば家族の気持ちもわからないではないが、施設に入れるということは、看取りを他者に依頼しているということを、きちんと法制化した方がいいのではないかなと思う。