高齢者の転帰先

 ー元の施設に帰れるようにー

 カルテに書いてある家族の希望を見て、この家族、ちゃんと本人を見ているのかな、と思ってしまう。コロナ下の昨今、面会もままならない事情もあろうが、余りにも現実から目を背けすぎていると感じる。

 八十を越えて骨折や脳梗塞を起こして、自立した「元の」生活に戻れる人は僅か。認知機能が保たれていて、リハに邁進して、本人と家族の並々ならぬ努力と意志があってやっと達成できるのが自宅復帰だ。

 家族は病院やケアマネに丸投げ、本人は判断能力がない、というケースでも、運良く適した施設に巡り合えることもあるが、多くは先立つものが必要だ。

 お金で解決できるケースはまだいいが、お金はない、在宅は無理、というケースは、昨今珍しくはない。なので、冒頭の、元の施設に帰れるように、になるのだ。

 誰しも生活は変えたくないが、こと病気や介護はある日突然やってくる。

 お金を払うからよろしく、というわけには行かないことが多いし、お金がなくても介護保険サービスで帰れることもある。最近は寝たきりでも病院には入れないケースも増えてきた。

 

療養病床の医療区分.厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001e933-att/2r9852000001e9i6.pdf

 

 これだけ見ても何のことか、見慣れていない人には分からないし、ここに入るんじゃないの?と適当に解釈してしまう人もいそうな表である。

 昨今の病院には、入れる資格や期間が定められている。完治する病気というのは中々ないが、寛解したら、帰るか、何処かへ移ってね、という決まりがある。医療資源の過度な消費防止と、治療が必要な人に優先的にベッドを回す施策だろう。

 私も担当している人が該当するかわからない時は事務に確認するようにしている。

 

 高齢者がたどり着く施設も種類が増えてきたが、病院はアドバイスはしても、決めてはくれない。

 時々ケアマネや相談員相手に怒っている人も見るが、責任者は家族だ。

 要望を伝えるのはいいが、使える資源がそこにいつもあるわけでもないし、中々思い通りにいかないのが現状だ。

 より良い選択をするためには、家族も医療制度に興味を持った方がいいのではないかなと思うが、余計なお世話か。