リハ拒否の理由

 認知症の方は拒否率が高い。

 コミュニケーションの取りにくさ=理解してもらえない(お互いに)であり、それはそれは高い壁になる。

 お互いに相手の状態や要望を理解できないので説明は通じず、要求されている、嫌だ、となるとラポールが損なわれる。かと言ってその一瞬のことをずっと覚えているわけでもない。次に行くと忘れていて、すっと起きてくれることもある。

 身障系病院では拒否されたら諦めて次へ行くのが効率がいいのだが、長期的にはその方のリハは失敗になってしまう。精神科なら待ちの姿勢もコミュニケーションも治療の一部だが、身障系では予定があっという間に崩れていく。仕事としては時間刻みの流れ作業なので(表現は不適切だが真実である)、途中で流れが遮断されるのはかなり辛いが、相手は人である。本来なら身障系であってもじっくり向き合って、理解してくれるまで説明しながら、が理想なのだが、チーム内でその状況を共有出来ない場合は、チーム内の信頼関係も崩れることがある。

「何で出来ないんですか」と他職種を責めるスタッフがいる。未熟としか言いようがないが、責められる方も負い目があるので言い返せない。

 時に他のリハスタッフなら拒否が少ない、となると、性別要因、接し方、時間、身体状況など、様々な条件を考慮する。それでも無理、となると、固有要因を考えざるを得ず、ますます担当者にプレッシャーがかかってしまう。

「歩くと危ないので、歩かさないで」と、最初から家族に要望されるケースもある。家族が接しても同じとなると、特有の理由はなく、担当者が責められる理由もなさそうだが。

 

 ただ、理解力もあってニーズもあってやれば良くなるのに拒否、というケースもある。患者さん側に不利益しかないのだが、押し売り感が強く、どこまで心理的な負担を負って理解を求めていくのかも課題になる。

 改めて主治医から説明して頂く、家族を巻き込むなど方法はあるが、本人が信念(!)を持ってやらないというケースも稀にある。

 セラピストに心理的な負荷もかかり、押しつけているという罪悪感も強くなって良いことは一つもない。受ける側がニーズを感じていない場合は、嫌われても介入出来ないので、程々にしている。

 ただ、ケースによっては、根気よく説明しないといけないこともある。ずっと拒否していた人が、最終的には歩いて帰れたケースを多々見て来たので、一概にあきらめてはいけないのだが…。

 

 一番大切なのは、セラピストのセルフコントロールだとしみじみ思う。

 職場によっては「専門職なのに」「仕事なのに」と言われることもあろうが、セラピストだって逃げていいし、人を頼っていい。

 本当に突破口がない場合だってあるのだから。