姿勢

 早いともう30代位から、『肩が上がらない』と言う人がいる。えー?30代で?と思うかも知れないが、年齢よりも職場とか、生活環境の方が問題だと思う。脳血管疾患後では、物理的な要因を見抜けないと、原因不明の疼痛を全部“中枢性”で片付けてしまう可能性だってある。細かく肩を触っていくと、運動時と安静時でそれぞれ活動する筋の緊張度や活動性(過剰か不足か)について知ることが出来る。弛緩性麻痺でも、運動させると部分的に緊張は変わる。それが正しい活動なのか、そうでないのか、機能解剖と運動学をよく頭に入れておく必要がある…何て言いながら、私はいつも解剖学と運動学の本は机の上に置きっぱなしだ。(きゃー、頭に入ってない)
 他動性運動というのは良し悪しで、運動させれば動かせる人は何となく自動介助運動的な運動になってしまうので、収縮方向へ働いている筋を伸張してしまい、『いてて』っとなることもある。他動運動の運動時疼痛は一見活動していないようで過緊張の筋を伸張してしまうことで筋性防御を誘発し、疼痛を起こしているのではないかと思う。触るだけで緊張する人もいるので、関節可動域運動は、必要ないのではないかと思うくらいだ。

 五十肩(いわゆる回旋腱板損傷)によく用いられる棒体操は、オーソドックスな治療法だが、少な目の負荷でストレッチが出来るため、ヘタに揉み解すよりは効果絶大だった。内外旋制限の厳しいケースで上肢挙上困難が多いことを考えると、背面で棒を両手に持って持ち上げる練習は理に叶っている。別に棒がなくても後ろ手にして手を持ち上げるだけでも出来る。普段から背面動作をやっておくと背中の筋肉が動くのでダイエットにもぴったり?
 
 視力の左右差も姿勢には影響する。片側注意障害や半側空間無視もいつも片方を向いているため、頸の回旋角がやや片方によって固定される。麻痺の影響で筋性斜頚というのも考えられる。この場合は眼球偏移を伴うことがある(『ベッドサイドの神経の診かた』など参照)。原因が一つなのか、複数なのか、複数なら主たる原因は何なのか、幾つ取り除けば悪循環から脱出できるのか考える。注意障害も無視もなく、麻痺も少ないのに右の肩だけが異常に緊張が高い方がいた。(この方の麻痺は左側)何の緊張かと考えていたある日、病室に迎えに行ったら、ベッドに横になり、頬杖をついてテレビを見ていた…右側を下にして。あーあ。
 と言うわけで生活暦の聴取は大切だ。環境調整、生活改善も指導しないといけないが、ちゃんと守ってくれるかどうかはまた、別の話…。

 宗形先生の本『宗形テクニック』には、地球の自転が左回転なので、人間の頚骨はやや左方向を向いていて、そのためにアライメント異常が起きるのではないか、と書いてあった。説得力はあるが、途方もない話だ。そういえば台風の回転は北半球と南半球では逆。南半球に住んでいる人は右方向に歪んでいるのかな。自分の住んでいる惑星の自転まで考慮しないといけないなんて、地球人って大変だ。