病院の窓から

  手術後、入院していた部屋は、景色もほとんど見えない、空だけの風景だった。と言うのも、後から建てた隣の建物が、すっかり視界を塞いでしまっていたからだ。

  晴れている日はまだいい。青空が見えたから。しかし、春が過ぎ、夏になろうかと言う頃の、部屋に入る西日は強く、とても目を開けていられなかった。ドレーンだらけでろくに動けない状態だったので、カーテンも閉めに行けない。カーテンを閉めるだけに看護師さんも呼べないので、眩しいまま目を閉じていることも多かった。

  夜は星も見えず、本当に気分が滅入った。

  少し歩けるようになって、久しぶりに見た街並みが、よく見ていた場所なのに、懐かしくて涙が出そうになった。

  移りゆく景色は、心を維持するのには大切なのだと思った。

  たまに飛行機雲が見えるくらいの空を見ながら、痛みが強いと、脊髄に挿されているドレーンに、スイッチで痛み止めを流し込む。聞くと30分に一回しか入らないそうで、いくらカチカチ押しても空振りになるらしい。暑い寒い痛い、気は晴れないで、最初の1ヶ月はどこか地獄にいるような気分だった。