それでも戻りたかった

  時短勤務で復帰しても、もし傷病手当を切られれば、収入は激減するので生活は厳しくなる。

  損するのにバカだなと思われているんだろう。常勤でも勤まる体力的な自信はあったが、この体で働いたことはないのだから、やってみないとわからない。その上での時短復帰だ。

  心配をかけるのが悪いと言うのなら、病人は働くことが出来なくなる。配慮ができないと言うのなら、そう言ってくれた方がすっきりするのだが。

  職業柄、脳血管疾患の後遺症をフォローしながら、職業復帰までのリハビリを見守ってきた。その中で、病気への配慮をきちんと出来る職場の話をいくつも聞いてきたので、 病人を働かせるのは未経験、という(一部の人の)対応に悩んだ。

  では、私で経験してもらおう。これから先、こんな働き手はどんどん増える時代だ。病気になったからからクビ、というのでは、どんな会社も成り立たない。ただでさえ若者の離職率は高いのだ。人の育て方、使い方は洗練されていかなければ、10年後誰も育ってなくてもおかしくない。…そんな心配はこっちでするからほっとけと言われそうだが。

  この違和感は、被用者と雇用者の立場の上下関係が厳然としてあるからなのだろうなと思ったが、病者が笑顔で職場に戻れる時代はまだ来ていないのだろう。

  職場のほとんどの人は、私の復帰を、よかった、と言ってくれたが、中にはそうでない人もいるようだ。

  

「もしかしたら傷病手当は切られるかも知れませんが、書類は書いてもらえますか?」と聞くと、主治医は「いいよ」と言ってくださった。

  健保に尋ねた時も、勤務日は支給できないが、勤務日があっても一律切られるわけではないので、申請して下さい、という回答だった。実際には申請してみないとわからないものの、不安は少し減った。

  今の所再発もしていないし転移もない。どこまでいけるだろうか。