靴と性差別

  ハイヒールの強制を禁止してほしいという嘆願書と署名が厚労省に提出されて話題を呼んでいる。

  病院や施設にはそもそもハイヒールの風習がないので、気の毒だなあと言うしかないのだが、整形外科的な観点から言えば、外反母趾の一番の原因は合わないハイヒールである。男性でああいう足を殆ど見たことがない。正しい歩き方にならない上に重さで爪先が靴に押し付けられるので、足のアーチが崩れ、変形の原因になる。ロコモティブシンドローム予防のホームページを作る前に、ハイヒールの弊害を知らせて若いうちから変形予防する方が、歩行困難患者が減って医療費が削減できて良いと思うが、病院を管轄する立場の厚労省にはそういう発想はないのだろうか。

 

  性差別かどうかというと、靴の形が綺麗で履きたい人もいるだろうから一概には言えないと思うが、何事も強制はよろしくない。3cmのパンプスだってそこそこ綺麗に見える。私の場合合うサイズがないもので、5cm以上のヒールは1足しか持っていないが、それも友人の結婚式で履いたきりだ。履きなれなくて転けそうになるので、式場への行き帰りは3cmパンプスだった。

  大体が危ないのだから、強制する人には7cmのピンヒール履かせてグレーチングの上を歩かせてみればいい。危なさがわかる。

  礼儀や常識はあって然るべきだが、健康を害してまで守るものでもない。場の雰囲気を壊すほど違和感のあるデザインの靴を履きたいと言っているわけではないのだから、ローファーでも別にいいのではないか。

  何事も多様性の時代だ。とは言え、マナーの線引きは難しい。相手がどう思うかも関係あるからだ。

  ガチガチの性差別主義者に引っかかったら、運が悪かったと諦めるか、その考え方は間違っていると戦うか。どっちにしろエネルギーを使う仕事だ。

  声を上げるのは大切だが、却って傷つかないかなあ…と、偏見の多い世の中を憂える次第だ。