怖い寿司屋

今週のお題「寿司」

 

 またもや子供の頃の思い出だが、近所に、頑固な親父が経営している小さな寿司屋があった。

 家族4人で食べに行って、どのくらい払っていたのか記憶にないが、ひと月かふた月に一回は行っていたような記憶がある。

 ある日、やはり家族で出かけた日、頑固親父は機嫌が悪かったのか、店先にいる奥さんに当たり散らし始めた。怒っている理由などわからない。何かを投げているのか、ぽこん、ぽこん、と何かが何かに当たる音と、頑固親父の怒鳴る声だけが店の奥から聞こえてくる。

 喧嘩してるの?どうやらそうらしい、聞いている身としては気が気でない。注文の品はちゃんと出てきたし、食べることは食べたのだが、怒鳴り声と、ぽこん、ぽこん、の音が気になって、味なんかよくわからなかった。

 それから、近所にチェーン店の寿司屋ができたり、ファミレスができたりして、次第にその店からは足が遠退き、気づいたら店は無くなっていた。

 田舎町だったので、貴重なお店だったのだろうが、あの怒鳴り声を聞いたら、遠耳にでも流石に気まずいだろう。

 昔はあんな感じの店が多かった。マニュアル商売になってしまったこの時代には、懐かしい文化遺産である。

 今もあるかな…ラーメン屋とかなら。