私はドンピシャ世代ではないのだが、親戚の子が集めていた。
どうやって遊ぶものか、何が面白いのかさっぱりわからなかったが、彼はかなりハマっていたらしく、当時スタジアムのような形をした闘技場セットを真ん中に、友達とよく遊んでいた。かの親の説明によると「ベーゴマのような物」だそうだ。
冬のある日、何か本を買ってあげようと言うと、この玩具が付録に付いた雑誌が欲しいという。今時の雑誌にはそんな付録がついているのかと驚いた。本当は勉強になる本をと思っていたのだが、それがいいという。
彼は雑誌などそっちのけで、赤と黒のベイブレードを取り出し、雑誌を私に持たせて、店のベンチに座り込むとせっせとシールを貼り始めた。黙々と作業は続き、出来上がるまで隣で座って待っていた。そのうち彼の親が帰って来たが、シールは貼り終わっていなかった。ちょっと歪んで貼ったシールを満足気に見ながら、彼は未完成のそれを大事に袋の中に仕舞い込んだ。
…本はどうすんのよ。ちょっと…いや、大分複雑だった。私が買ってあげたのは、本だった筈なのだが。
まあ、何を買ってあげても満足ならそれでいいのだが、男の子ってこんなもんなのかね。
そんな彼もこの春中学生である。
この冬のある日が、思い出の1ページになったのなら、冥利に尽きるのだが、覚えているかどうか笑。