占いと不安

 以前、タロットカードに凝ったことがある。二種類ほど持っているが、今は殆ど使っていない。ホロスコープ、手相、トランプ、出来そうな占いは大体手を付けたが、今思うと、不安解消の手段だったような気がする。自分の行動への理由付けが欲しい頃に嵌まったが、今はほとんどやらない。
 タロットカードは結構な値段のするものである。学生で稼ぎのない分際で、何でこんな高いものを購入したのか、当時は縋りたいものが他になかったのだろう。
 人は変えられない、変えられるのは自分だけ、という言葉がある。占いは、自分だけでなく、人はどうなのか、ということまで占う。それだけに断定的な事は言わない。血液型診断が、何となく合致しているような気がするのは、何となく誰にでも当てはまるようなことを言っているからなのだと以前テレビ番組で言っていた。ベストセラーになった○型説明書シリーズを一通り読んだが、AでもBでも、何となくどれでも当てはまるような気がしてしまう。巻末にも『疑っちゃだめ』と書いてある。あー、そうそう、てな感じで楽しむための本なのだ。あー、私ってそうなの、そうそう、って、言いたい人の為の本なのだ。それはすごくよく分かる。人の意識は70%は自分にしか向いていないと言う。みんな、『あなたって凄いのね』『あなたってそんな人なのね』って言われたいのだ。でも、みんながみんなそうだったら、人間関係はボロボロだ。だから聞く人『臨床心理士』や『心療内科医』がいるのだろう。私も聞く人の一部の筈なのだが、クライアント相手ならふんふん、ふんふん、ふーんふん、と真面目に聞いているのに、友人相手になると喋りたくてウズウズしてしまう。ところが、ウズウズしているのは、多分相手も同じなのだ。だから、何となくギクシャクしてしまう。では、何故クライアント相手なら素直に聞けるのか。仕事だから、というだけではないだろう。例えば、クライアントは+のストロークを与えてくれることが多い。自分は弱い立場で、相手に世話になっているのだから、一生懸命自分が弱いというところを見せて、相手を持ち上げたりして、保護して貰わなければならない。これを単純に喜んでしまうか、弱さの裏返しと受け取って、援助に繋げていくかは大きな違いになる。保護の必要な子供でも同様ではないだろうか。−のストロークを出せる相手というのは、心を許せる相手か、逆ギレの対象か、それとも、関心がないか、どれかということになる。心を許せる相手なら、修復も可能だろうが、逆ギレだと後は修復困難になる。
 占い場面では、初対面でも会話が成立する。聞く耳を持っている人が自分から求めるアドバイスなのだから。血液型に限らないが『あなたってこんな人』と肯定形で言われて、謙遜するならともかく、強否定で返す人は少ないと思われる。それに、占いを必要としている人は、多かれ少なかれ不安を持っていると思われるので、不安な面に関してのアドバイスはよく耳に入ることだろう。しかも、言っているのは占い師ではなく、カードや、星なのである。
 
『今日のあなたの人間関係はやや不安定です。週末に近づいて体力も消耗しているので、充分休養を取り、出来る仕事は速めに片付けてしまいましょう。年上の異性が幸運を運んできてくれるかも知れません』
 当たるも八卦、当たらぬも八卦
 でもこれって、どの占いにもありそうな文言、きっとみんな、同じような気分になってしまっている週末、多分誰にでも当てはまるアドバイスなんだと思う。

 不安は人が変わるときの原動力だと言う。占いに頼りたいときは、自分が変わろうとしている時なのかも知れない。何を望むのか、内なる声を聞き逃さぬように。