転院

 かかりつけ病院は、実は元職場でもあった。(この時点ではまだ職員だった)

 なので、かかりつけ医は上司で、職員は同僚でもある。

 同僚が心配して大挙して押し寄せてくるのを防ぐため、私の部屋は面会謝絶になっていた。それはそうだ、入院するほんの3週間前まで、普通に働いていたのに、突然いなくなったら、誰だって心配する。

 最初の頃こそは誰も来なかったが、入院2週間目あたりになると、一人二人とやってくる。そのうち毎日誰か来るようになった。

 最初こそ、病名も隠して心配させないように、なんて思っていたが、誰かが来てくれると気も紛れ、ちょっと元気になったような気がした。同時に病名もバレて、結局は心配させたのだが。

 栄養がどんどん低くなっていった時期で、まだ寒かったので肌が荒れていくのを見て、アロマオイルを持って来てくれたり、食べられないのを見てプリンを持って来てくれたり、甘いものなら食べられるかとおやつのチョコを分けてくれたり、痛くて眠れない夜にはおしゃべりに付き合ってくれた人もいた。

 上司の先生達は毎朝毎晩回診に来てくれ、痛いのは我慢しなくていい、大丈夫かと励ましてくれた。この時期に家にいて、一人でいたら多分気が滅入ってしまっただろうと思うが、知っている人たちがたくさん周りにいて励ましてくださったことで、乗り切れたのだと思う。

 病気だからと何も断らず、人が来るままにしておいたほうが余程元気になれるのだと、しみじみ身に染みた。お見舞いは、断らない方がいい。余程の事情がない限り。

 

 2018年4月下旬。

 手術のために大病院に転院した。この時点での痛みなど、あとから思えばなんてことはない。実はここからが本当の勝負だった。