生命保険

 2018年4月上旬。

 

 風雲急を告げる、ではないが、死ぬかも知れない、と思ったら、色んなことが頭をよぎる。

 人生に一片の悔いもない。やりたいことはあらかたやった。ネット上のブラック遺産は仕方がないなと思いつつ(残っていたのはこのブログと、今はあるかどうかわからないメールマガジン)、パソコンは処分してもらうにしても、どこに何があるかくらいは書き残しておかないといけない。

 エンディングノートはずいぶん前に書いてあったのがあった。ただ、見直してみるとだんだん寂しくなってくる。これは今見るものじゃないな、と思い、ファイルを閉じた。

 兄弟に「あとを宜しく」と頼むと、「何もいらないから生きていてほしい」と言われ、この準備はまだ早いのだと思い直した。

 

 3月はほぼ毎日外来受診、3月末からは入院で、お金が湯水のように出て行ってしまう。以前に軽い病気で入院した時に、保険金を貰ったことがあったが、医療保険というものは治療が全て終わってから、あるいは一定の期間が経過してからでないと受け取れない。ましてや、今回は命があるかどうか分からない。動けるうちに確認しておかなければならないと思い、保険会社に電話をかけた。

 ネット上の口コミでは、漢字の生命保険会社の評判が非常に悪いが、実際に大変頼りになった。応対は機械的ながら、テキパキと質問に答えてくれ、やはり請求は退院後になるということで、書類だけは準備しておいた。社会人になったばかりの頃に、知り合いに勧められて入った古い保険だったが、退院後、スムーズに支払いを受け、なんとか生活が困窮する事態は避けられた。健康保険の高額療養費の支給や傷病手当も役に立った。サラリーマンでよかったなと心の底から思った。

 虫の知らせだったのか何だったのか、契約更新時にがんに重点を置いた保障に変えていた。本当は、必要ない方がよかったのだけど。

 

 がん保険は必要かどうか、というネット上の情報をよく見かけるが、ステージⅠの、数日で退院できる手術なら、仕事に復帰するのもそう難しくはないので、本当に要らないと思う、病巣の場所や程度で後遺症や合併症は変わってくるので、人によって入院期間は違ってくる。私は術後も長期間食事を摂ることができず、切除した病巣が大きかったので1ヶ月以上の入院になった。

 保険などというものは、必要なのかどうかはその時になってみないとわからないものだ。身の丈に合わないような大きな保障はいいとしても、入れる範囲で入って置いた方がいいと、その時がきてしまった私は思う。