術前入院

 食事が喉を通らず、どんどん体は細くなっていく。 

 元気な頃は、ダイエットしても痩せないな、なんて思っていたが、病気になるとあっというまに体重は落ちていく。

 

「食べられないなら、点滴しないと」

 大病院で点滴を受けながら、痛みに耐えていた。

 手術まで1ヶ月。これではとても耐えきれない。

 かかりつけ医に相談した。

「入院したら」

 その日からかかりつけの病院に入院させてもらい、毎日点滴を受けた。強い痛み止めを処方してもらい、疼痛も楽になった。しかし、この時点で手術までまだ1ヶ月以上あった。体重はどんどん減っていく。

 病院では絶食扱い。留置針をつけたまま日中家に戻り、流動食を食べ、歩けるだけ歩いた。寝ているとどんどん体が痛くなる。廃用症候群だ、と思った。

 大腸はガンで塞がれているので、食べると突き上げるような嘔気に襲われる。それでも食べないと、動けなくなってしまう。

 友人が胡麻豆腐や流動食を差し入れてくれた。

 どこまで持つか。

 一週間に一度は大病院に診察に呼び出されつつ、痛み止めを打ってもらいながら耐える日々が続いた。

 

 この時食べていてよかったもの。

 高齢者用の流動食、プリン、豆腐、胡麻豆腐。おかゆ、野菜ジュース。

 背に腹は代えられない。とにかく口に入る物は何でも食べた。

 気が早いと思いながら術後のことを考えて、退院後の食事について書かれた本を買った。

 手術が終わればこの痛みから解放されるに違いない、そう思っていたが、これがまた大きな勘違いだった。