糖尿病になるかも知れないから

  そろそろ術後一年が来る。

  自覚症状らしきものはほぼなく、色々切り飛ばしたとは思えないほど快調だが、加齢の影響は否めない。 

  ちゃんとお手入れしているつもりなのに日々増えて行く顔の小じわ大じわを指ですりすり伸ばしながら、こんなんじゃ追いつかない日がいつか来るのだろうなとそこはかとない不安を感じている。

 

  術前に、糖尿病内科を受診した。

  膵を切るので、糖尿病になるかも知れない、と内科の先生はおっしゃる。専門医の診察を受けてくださいということらしい。

  診察といっても、先生はデータを見て、フォローします、と仰っただけだったが、まだ腹に病巣を抱え、麻薬で押さえきれてない痛みと疲労と吐き気と戦いながら外来で2時間は待ってからの意識朦朧状態だったので、正直先生の顔も覚えていないし、何か他の話もあったかも知れないが、すっかり忘却の彼方だ。

  入院中は延々と血糖値を測り続けたので、データを見ながらフォローはして下さっていたのだろうが、姿を見ない先生の存在は患者は意識しないものだ。

  結局血糖値は一度も異常値に達することなく退院となり、現在も異常は出ていない。同じ先生にお会いする機会は二度はなかった。

 

  糖尿病は血中ブドウ糖の濃度が急激に上がって膵臓を傷つける病気だが、術後殆ど点滴のみで生き、出された食事を食べられなかった生活では、血糖値が上がるタイミングはなかったと思う。その代わり栄養失調状態だったが。

  現在は術後にあったようなダンピング症候群のような症状はほぼないが、少し食べる量がオーバーすると腹が重く感じるので、満腹までは食べないようにしている。すぐお腹が空くので、こまめにおやつをとるが、太ってきたなと思って食べないようにすると、数日で体重が減ってしまう。ダイエットしても中々痩せない体質だったが、変な体になってしまったものだ。太りすぎない、痩せすぎない食事量調節は意外と難しい。

  糖尿病になるかも知れない体に、と言われてはいたものの、食事内容に制限はない。外科の先生の診察の第一声はいつも、食べてる?である。