傷跡

 切除した臓器と病巣の大きさは「キャベツくらいあった」らしい。

 結局、私は写真でしか見ていないが、すごいにおいだったそうなので、見なくてよかったかも知れない。

 胸骨の真下からヘソ下まで20cm以上はあるかと思うような傷は、痛みと傷の大きさにそれほど比例していないように感じた。

 それよりも、傷の両脇にあるドレーンの入っている小さな穴と、ヘソから入っているドレーンの穴はどこが痛いのかわからない位痛かった。

 外科の知識はあまりないので、そのドレーンがどこに繋がっているかはよくわからない。一本は膵管に繋がっているらしい。1日に二回くらい、看護師さんが瓶の中身の透明な液体を回収していく。このドレーンは退院前二週間くらいで、2cmずつ徐々に抜いて短くしていき、最終的には抜去となったのだが、調整するときは造影CT下でなくてはならず、動かすとやたら痛いというめんどくさい代物だった。

 このドレーンが全部抜けたのは、退院2日前。抜けたから帰ってもいいよ、という感じで、個人差はあるようだ。食事はほとんど摂れていなかったので、早く帰さないと栄養不足になると思われたのかも知れない。

 

 入院中は傷が気になり、一度も入浴しなかった。

 帰ってからもしばらくは浴槽に浸かれず、シャワーで済ませた。退院したのは6月だったので、気温は高く、シャワーだけでもなんとかなった。体力的に入浴は短時間で済ませたいというのもあった。

 傷は抜糸しなくてもいい縫い方がしてあるということだったが、赤くミミズ腫れのように腫れ上がり、服が擦れると痛かった。

 ネットで情報を探し、傷の上から腫れるシールのようなものを見つけ、2ヶ月ほど貼り続けた。少し値段の張る代物だったので、途中で粘着力の弱い固定用テープに切り替えた。服が擦れないので、だんだん傷の盛り上がりが小さくなっていって、現在は跡がすーっと一本赤い線になって残っているだけで痛みはほとんどない。

 経験のないことばかりで、あらゆることが手探りだったが、いい時代だ。ネットで探せばそれっぽい情報は手に入る。自分に合うかどうかは、試して見ないとわからないので、全部鵜呑みというわけにはいかないが。