公共交通機関

  久し振りに一人でバスに乗った。

  たまたま時間帯的に混んでいて、座れなかったが、外乱で転ぶほどではないと思っていたので、混んだ車内で立っていた。揺れるたびに切った腹の突っ張りは気になったが、痛みはなく、許容範囲だ。

  途中で席が空いたので座れた。

  腹部の傷や筋力低下は外からは分かりにくい。痩せすぎていて明らかに病人に見えた一年前でも、公共交通機関は避けていた。座れるとは限らないからだ。無理して乗って痛い目に遭うのなら、出来るだけ乗らない方がいいと思う。マークを付ける方法もあるが、あまり期待しない方がいい。健康な人でも、電車やバス通勤は疲れる。進んで譲りたい人などいないはずだ。

 

  腹部切開術後の腹の突っ張りは意外に長く続く。少しづつ少しづつストレッチしていくことが内臓にも良い。あまり急にやりすぎると痛いので、マイルドにマイルドに行う。ちょっとした足の動きでぴっと突っ張ることがあるので、本当に注意深く行わなくてはいけないが、術直後はもどかしいくらい伸びない。今でも座っているとどんどん背中が丸くなっていく。意識して姿勢は正しているが、結構きつい。

  術後入院リハのプログラムにはエルゴメーターがあった。五分程度だったが、縫った腹には堪えた。傷が瘢痕化してしまうと中々伸びない。早期の運動開始が大切だ。

 

  社会復帰や、生活状況を考えると、電車やバスに乗れないのは色々制限をもたらす。腹の傷が電車に乗りにくくなる原因になるとは、術後には思いも至らない。それどころではないほど痛い。

  退院後、少しづつ歩きながら傷を伸ばし、1ヶ月後にはふらふらしながら自転車にも乗った。段差に乗り上げただけでも傷に響いた。腹部を庇うと前傾姿勢になるので腰痛の原因にもなる。

  普通の生活に戻るのは結構大変だ。