無理をする理由

 まだ細いなあ、と主治医に言われて数ヶ月。

 体重は余り変わらず、気を抜けば痩せてしまうので、食べられるものを食べられる時に口に入れている。

 仕事中は特に間食をすることもなく、昼食までもつので助かっているが、痩せ過ぎている人や一度に多く食べられない人は、どうしても分食が必要になる。

 入院中はおやつにドーナツやビスコベビーチーズなどが出ていたりしたが、ヨーグルトとプリンが一緒に出た時は閉口した。このチョイス…あるものを取り敢えず出したとか思えない…片方だけ食べて残し、冷蔵庫には栄養ゼリーと残ったおやつ、飲めなかった牛乳がどんどん溜まって行った。幸いにもストックは家族が持ち帰り消費したが、高機能栄養ゼリーだけは退院してから泣く泣く自分で食べた。

 時々患者さんが食べているのを見るが、美味しい?と聞くと、そう不味くは無いという答えがほとんどで、皆さん味覚は大丈夫かい…と心配になるが、言語聴覚士さんは「美味しくはない」と言っていたので、私の舌がアホになっていないことだけは間違い無いようである。

 食事の食べ方は重症度や、癌があった位置にも寄るので、同じ大腸癌でも、食事の予後は個人差があることを申し添えたい。

 

 と、こんな感じで、術後はとにかく食事が大変で、中々太れない。

 消化のいいものをよく噛んで、とやっていると、時間もかかるし、食べ物の種類も限られる。

 それで太れって言われても、思う様には中々いかない。でも、時間は容赦無く過ぎていき、早く社会復帰しないとと、気持ちは焦る。

 今朝の某番組のスポーツコーナーで、張本さんが水泳選手の池江さんのことを心配していたが、半年じゃ体重は戻らない。でも、自分はできるんだっていう自信は欲しいのだ。足掻きに見えるかもしれないが、競技の勘と自信を取り戻す為の無理だったのだろう。コンスタントに競技に出られるわけではないと思う。本気で競技に取り組む為の体力と体重を取り戻すには最低一年半はかかるだろう。今回勝ったことで、戻れる自信と、トレーニングのペースが掴めたのではないか。ただ、張本さんの意見ももっともで、もう少し体重が戻るまで、もう少し時間をかけて療養していただきたいなと思う。

 

 心おきなく療養するためには心の支えも必要だ。

 ちょっとくらい無理をしても、なんとかならないかと焦るものだが、焦っている時にはなんともならないのが世の常の様だ。