試練とは

  芸能人のガン告白が相次いでいる。

  命のことを考えるようになった、とか、神の与えた試練だとか、皆さん殊勝な言葉で表現される方が多い。実際、今まで生きてきた風景が走馬灯のように脳裏を駆け巡るし、哲学的な事を考えたりしないこともないが、とにかく思うのは、痛いのだけは嫌!だった。

  幸い、術前の一ヶ月あまり、主治医がたっぷり痛み止めを処方してくださったので、体力はどんどん低下して行ったものの、痛みはほとんど感じずに過ごすことが出来た。キューブラー・ロスの死の受容過程というのがあるのだが、障害の受容過程としても紹介されている文献もある。術前の気持ちは、取引の辺りかなあと思いながら、心はもうまな板の上の鯉だったのだ。告知された当の本人よりも、周囲の人達の方が驚いたり戸惑ったりしたのではないかなと思う。

 

  心の持ちようは人それぞれだと思うが、方向性を決めたらあとは痛みと体力低下との戦いだ。勝つのは難しくても、負けなければいい。支えてくれる人もいる。とにかく、置かれた事態を冷静に見つつ、気持ちで負けないことだ。病は試練ではなく、自然現象だ。

  頑張らなくていい。ただひたすら、耐えるのみ。痛すぎて、気晴らしなんて、できる余裕はないのだから。