リハビリの話:足先へのリーチング

  専門用語では足尖と書く。機種によっては変換候補が出ない。

  意外と見落としがちな、身体各部位へのリーチング問題。

  頭頂は肩屈曲90度あれば届くが、結髪(後ろで髪を結ぶ)の場合は肩は外旋位になるので、難易度が上がる。同様に結帯(帯を後ろで結ぶ動作。今時ならエプロンの紐を背後で結ぶとか)の場合は肩は内旋位になるので、これもちょっと難易度が高いが、肩は自由度が高いので、余程壊していなければ、人工肩関節でもそこそこ動けるようになる。

  足尖だと、股関節屈曲の角度が100度から120度は欲しい。身体を前傾させる動作は、腰ではなく、足で動いているわけだ。なので、股関節が拘縮、可動域制限をきたしているケースでは、靴下が履きにくい、落ちているものが取れない、と言った動作困難が起きる。

  落ちているものを拾うのは、今時は100均でも売っているマジックハンドが活躍するが、流石にこれで靴下を履くのは難しい。ソックスエイドという道具があるが、買うとけっこうな値段なので、クリアファイルと紐で手作りしてしまう。ただ、最近はリハ成績がよく、最終的には届く人が多いので、代償手段もあまり必要ない。

  機能改善としては肩と股関節の可動域拡大運動、人工股関節置換の場合は、痛みの出やすい姿勢を避けて動作するのも1つの方法だ。例えば、物を拾う時に前傾せず、座って横から手を伸ばすと股関節を曲げなくて良い。 立位で前傾せず、膝を曲げる方法もあるが、この場合は膝の曲げ伸ばし時に膝折れを起こさないことが前提なので、膝の筋力強化をしっかり行う。

  中には、股関節は曲がるけど腰が硬くて届かない、という人もいる。椎体の可動域制限は中々に厄介だ。原因が腰なのか足なのか、よく見極めて対処する必要がある。

  思ったより、身体の面積は広い。健常人でも背中で握手できない人は多いと思う。

  拘縮や、筋の短縮が強く、どうしても動きにくい場合は、ここに揚げたような代償的手段を使うと良いかと思うが、できれば機能改善で動作出来るようになる方が良いので、専門家のアドバイスを受けながら、しっかりと運動を続けよう。