不機嫌なベッド:老後のお金と自分の身体

 お金のことを過度に気にされる患者さんがいる。

 私も大手術をして100万以上の請求書(高額療養費も健保も適用前の額。実際は両方適用で1ヶ月あたり10万円そこそこの支払いだった)を見たことがある身の上なので、気になるのは分からなくはない。しかしよくよく聞くと、ご自身も堅い仕事の経歴があり、お子さん達も生活に困るような方ではないことが殆どだ。

 きっと若い頃は苦労して来られたんだろうなと思って話を聞くと、よく出る高級グルメの話。お金持ちでないと食べられない。

 そこで気づいたのは、お金を使う優先順位だ。

 身体のメンテナンスは生きていくには最優先事項だと思うのだが、あまりにお金がかかり過ぎるので、病院代勿体ないなと私でも思ってしまう。この続きで介護やリハにかけるお金を勿体ないと思ってしまう人も一定数いるようである。

 病院関係は、元気のある頃は形にならないサービスが中心だ。いざ命の危険となるとお金のことは言っていられないのだが、勿体無い価値観のまま高齢になり、身体のメンテナンスを怠って寝たきりになる人が少なくないようだ。

 形のないものや、その場で効果が無いものにお金を払うのは誰でも抵抗があるものだし、高齢の方の中には、もう年だし、身体のメンテナンスにお金を掛けたくないと思っている方もいる。内臓が元気で運動器が動かない方だと廃用長期入院する患者さんの出来上がりなのだが、本人が何にお金をかけるべきなのかもうわかっていないので、説得するにも中々パワーがいるのである。

 

 昨日もお説教ばかりだと怒られたが、それも仕事なんでと答えた。他人だから言えることもある。

 寝たきりになる前に、はたまた高齢になってしまう前に、間違わないお金の使い方をしないといけないのだなと、考えさせられた。

 とは言っても、お金って貯め方も使い方も難しい。金融リテラシーは子供の頃から教えるべきだ。人生は意外と短く、老後は思ったより長い。