ご飯が美味しくできない、と曰う

 我が家の高齢者。そもそも、料理はそんなに上手な人ではなかった、なんて聞かれたらきっとぶち回されそうな気がするが、私は食事なんて食べられればいいと思っているので、料理が下手かどうかは余り気にしたことがない。なんなら卵焼きは絶品で、家族親戚誰もが完食する。

 が、最近は元々好きではなかった調理に更に自信がないらしい。恐らく、やらないでいいならやりたくないのだろう。

 まあそこそこの高齢なので当たり前だが、料理を辞めると認知機能が急激に下がるというし、出来るなら続けて欲しいのだ。卵焼き美味いし。

 それに日中は私も勤務なので、3食作りながらは難しい。嚥下が味覚がと言い始めると対策も必要になってくるが、今はとろみ剤を自分で調整できている。

 なので、加熱するだけで食べられるものを何種類か買って来ているのだが、意外と減らない。何分加熱するのか、そもそもそのまま食べていいのかわからないらしい。

 作る時は、普段はキューピー3分クッキング、NHKの料理番組を録画して参考にしている。ビデオ機器は使えるのだ。ならばとタブレットを渡してみたが、タッチ、スワイプ、ピンチアウトが分からなかった。直感で使えるはずの機械も昭和のテレビ世代には使いにくい。その割にYouTubeの懐かし歌謡は楽しく聴いているが、自分で選曲は出来ない。この辺りは入院患者さんが、職員が通る度に「これ出してー」と頼んでいるのと変わりないか。

 

 お惣菜や冷食も、アレンジとなるとそこそこ能力も必要なようで、楽そうだから、レンチンで食べられそうだから、と買って来ても使わない。それで「野菜がない」とぼやく。あるものでなんとかしようという感覚は元々なかったので、例え使わなくても、そこにないと使う発想にならないのだ。

 認知機能が低下すると選択の対象数を減らして負担を軽減するのはお約束だが、減らしても対象が目新しかったり、選択肢が少なすぎても適応できない。簡単でしょ、と渡してみても、馴染みがなければ使って貰えないのだ。それだけ、馴染みの環境、気に入ったモノというのは大切なのだ。

 

 とは言え、ご飯が美味しくできない、はきっと言い訳だと思う。だって、子供の頃から、ずっと味変わってないもん…。